SMAP解散騒動はレコード会社にとって晴天の霹靂?(下)

先週のコラム(上編)にて、SMAPのCDやDVDを販売しているレコード会社である「ビクターエンタテインメント」を傘下に抱える株式会社JVCケンウッド(以下、「JVCケンウッド」)の有価証券報告書(有報)には、SMAP解散を【事業上等のリスク】とはしていないことを書きました。

一方、アミューズ株式会社(以下、「アミューズ」)の有報では、【事業上等のリスク】にアーティストの解散や活動休止が売上に影響を及ぼす可能性がある点を記載していました。

両社の違いがどこにあるのか、具体的な数字(金額)をもとに考えてみましょう。

アミューズの第37期(平成26年4月~平成27年3月)の有報によれば、グループ全体の売上高は400億円弱。
それに対して、上位3アーティストに関する収入が占める割合が全体の売上高の例年40%前後と、【事業上等のリスク】には記されています。
400億円の40%ということは160億円。それを3アーティストで稼いでいる訳ですから、もしかしたらアーティスト1組の解散や活動休止が、数十億円単位の減収要因になるかもしれないということを意味します。

一方、JVCケンウッドの方はというと、同社の第7期(平成26年4月~平成27年3月)の有報によれば、グループ全体の売上高は3,000億円弱。
それに対して、参加のレコード会社の売上(ソフト&エンターテインメントセグメント)は300億円弱。
仮に、そのうちSMAPのCDやDVDのセールスの占める割合が高いとすれば、アミューズのようにSMAPの解散や活動休止が、数十億円単位の減収要因になる可能性も否定できません。

そこから先の詳しい情報は分かりません。しかし、金額的なインパクトが同程度になる可能性もありつつ、なぜ両社でリスクとして掲げるか否かに違いがあるのかを考えると、おそらく「有報が誰のために書かれているのか」という視点に立つ必要がありそうです。

基本的に誰でも見ることができる有報ですが、主として有報提出会社の投資家と、投資を検討している人たちに向けて作成されています(話を簡単にするために、この先は投資≒株式を買うことにしましょう)。
既に投資している人にとっては「このまま株式を持ち続けるか否か」の判断材料、投資を検討している人たちにとっては「この会社の株式を買うか否か」の判断材料の1つが有報なのです。
また、それは有報提出会社の株式を買うということは、その会社を親会社とする企業グループ全体に対して投資することとも考えられます。

アミューズの場合、アミューズの株式を購入した直後に上位3アーティストの誰かが解散したり活動休止したりすると、株式を持っている企業グループの売上高が一気に数十%減少する恐れがあります。
一方、JVCケンウッドの場合、JVCケンウッドの株式を買った後にもしSMAPが解散して数十億円の減収になっても、株主にとってはJVCケンウッドグループ全体の売上高3,000億円弱に対して数%程度の減収という影響しかないと考えることができます。

JVCケンウッドとしては、その他の事業(オーディオやカーナビなど)を含めて、他に数十%の減収要因を引き起こすリスクがあるのであれば、傘下のレコード会社でCDやDVDをリリースしているアーティストの解散や活動休止のリスクよりも、そのことを優先させて、有報で投資家に知らせるべきでしょう。
そういった観点で、アミューズとJVCケンウッドの違いがあったのではと考えることができるのではないでしょうか。

皆さんもご存知のとおり、SMAPはひとまず解散しないことで落ち着いたようですが、国民的アイドルグループであっても突如として解散する可能性があるということを実感した今回の騒動。 一方では、解散回避に向けてファンが「世界に一つだけの花」を売上300万枚のトリプルミリオンにするべく購買を呼びかけた結果、13年前の楽曲がCDセールスチャートの上位に浮上するといった現象も起きました。 今回の一連の騒動を、レコード会社としてどのように捉えているのか。もしかしたら、6月末ごろに公開さえるJVCケンウッドの有報には載っているのかもしれません。

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p style=”text-align: right;”>(ネットスクール株式会社 藤本拓也)

株式会社JVCケンウッド

アミューズ株式会社

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