東芝の“チャレンジ”の目標はどこにあったのか?

決算イメージ3か月ほど遅れて株式会社東芝(以下、東芝)の2015年3月決算の有価証券報告書(有報)が提出された。
過去5年間、2010年3月期から2014年3月期までを見ても、その差引合計の訂正金額は、売上ベースで143億円、営業利益ベースで2,670億円となっている。
なんと、売上高の約19倍もの営業利益の訂正。
今回の「不適切な処理」の目的が、利益額の調整にあったことがよくわかる。

さあ、そうすると「不適切な処理」をさせた経営者が、どこを目指して利益額の調整をさせていたのかが気になってくる。きっと、単に「赤字回避」というわけではなく、他に目的や目標数値があったはずです。それなしには“OK!チャレンジ成功!”とも言えないはず。

そう思ってみると、今回の訂正で、ある数字が大きく動いていることに気付く。
それは「株価収益率(以下、PER):株価/1株当たりの純利益」。1年分の利益の何倍が株価になるかを示すこの指標は、通常20倍を目安に、それを下回るのが理想とされる。100倍を超えるような値になると、今投資しても100年分の利益がないと回収できないことを意味しているため、投資家としては投資しづらい企業という判断となる。
この指標、有報では冒頭の【主要な経営指標の推移】の中に過去5年分のPERが掲載されており、過去の動きも含めて有報を見れば一目瞭然である。

東芝の決算が訂正されたことにより、このPERも大きく修正されている。詳しくみると、訂正前は2011年3月期から、12.51倍、22.01倍、25.84倍、36.41倍と、まあ、低くはないが安定して推移している。
これが訂正後は、10.89倍、482.64倍、148.89倍、30.72倍と、大きく変化している。

これを見ると、東芝の経営者は、PERを20倍くらいに保つように、社員に“チャレンジ”させて利益を調整したのではないかと思えてくる。
もちろん、日々変動する株価に連動して調整するのは難しいものの、上場企業の経営者として市場からの評価である株価を気にしてのことだとすると、一応の辻褄は合う。

藪にらみかもしれないが、今回の事件には、株主重視が叫ばれる昨今、自社株式の時価に一喜一憂する、そんな経営者の姿が垣間見えるような気がする。

単なる仮説で真意は分からないが、訂正前と後の有報を見ればこんなことも分かってくる。

ネットスクール株式会社 桑原知之)

株式会社東芝

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