サーティワンのキャンペーンで増えるアイスのからくり

アイスクリームイメージ先週のコラムで、サーティワン アイスクーリーム(以下『サーティワン社』)のキャンペーンについて、「ダブルをトリプルに」というキャンペーンはよく見るものの、「シングルをダブルに」というキャンペーンを見かけないという疑問だけを投げかけてしまいました。

今週のコラムでは、その謎について有価証券報告書(有報)を見ながら、実際の数字を交えて仮説を立て、検証してみたいと思います。

製造業を営む企業の有報では、販売したものの原価の内訳明細として「製造原価明細書」というものも作成・公表します。
業種によって分類が異なる場合もありますが、一般的には原価を次の3つに分類します。
1つが「モノ」を消費したことにより発生する「材料費」、もう1つが「ヒトの労働力」を消費したことにより発生する「労務費」、最後に「それ以外」の「経費」です。

サーティワン社もアイスクリームを作っているので、言わば製造業でもあります。
そのため、サーティワン社の有報には製造原価明細書がしっかりと記載されています。

同社の第42期(平成26年1月1日 ‐ 平成26年12月31日)の内容を見てみると、製品の売上高が約146億円に対し、その原価は約78億円。原価率はおよそ53.4%となります。100円のアイスクリームを製造するのに必要な原価が約53.4円ということです。

その原価を更に細かく見た製造原価明細書によれば、原価の内訳は材料費の構成比が83.7%、労務費が7.3%、経費が9.0%と書かれています。
100円のアイスクリームの原価が約53.4円という計算ですから、それぞれの構成比を掛け合わせると、材料費が約44.7円、労務費が約3.9円、経費が約4.8円となります。

多少乱暴かもしれませんが、有報から分かるこの情報をもとに、増量キャンペーンを行った場合の原価をシミュレーションしてみましょう。

まず、「ダブルをトリプルに」というキャンペーンです。単純計算でアイスクリームの量が1.5倍になるので、材料費だけを1.5倍にしてみましょう。すると、100円のアイスであれば材料費が約22.3円増えます。元の原価が53.4円ですから、単純計算で原価が75.7円まで増えますが、それを100円で販売できれば、家賃や広告費、店舗スタッフの人件費などを考えても、何とか赤字は免れそうです。

一方、「シングルをダブルに」というキャンペーンにするとどうでしょう。単純計算でアイスクリームの量が2倍になるので、材料費も2倍になる計算です。すると、100円のアイスクリームの材料費が44.7円増えるので、元の原価53.4円に加算すると、原価が98.1円になってしまいます。
なんとか製造に係るコストを上回る金額で販売できていますが、更に家賃や広告費、店舗スタッフの人件費を払えば、赤字になってしまいます。

実際にサーティワン社がどのようにそろばんをはじいてキャンペーンの損得計算を行っているかは分かりませんが、外部の者でも有報の内容を見れば、その理由の一端を垣間見ることが可能になります。
ちょっと大変かもしれませんが、あなたもよく使う企業のキャンペーンの謎を有報で解き明かしてみませんか?

ネットスクール株式会社 桑原知之)

B-R サーティワン アイスクリーム株式会社

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