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地域力創造例:秋田

オンライン体験から現地(東能代駅・能代駅)に来てくれた旅行者の手記

2021年3月23日(火)の北羽新聞記事の方から手記を頂戴しました。

北羽新報掲載記事

「五能線の旅に参加してみて思ったこと」オンラインからリアルの旅をして見えたこと

バイクで旅をするのが大好き。
電車の旅は好きではなく、なるべく避けている。
2020年はバイクで本土一周をしたけれど、電車には1度も乗らずに済んだ。
機械としての電車には興味あるけど、乗ることは好きではなく、鉄道ファンとは思ってない。

そんな僕が「バイクを置いて五能線の鉄道旅に行ってみよう」と思うに至った話です。

さて、五能線の話をする前に、僕がオンラインツアーの沼にはまっていった経緯から話していきたいと思います。

新型コロナの影響の中でも世界は前に進んでいて、悪い事ばかりではない。
その1つがオンラインツアーの出現と普及でした。
オンラインツアーはどこに居ても参加できて、知らない場所のことを知ったり、行ったことのある場所を懐かしんだり、そんな体験が手軽にできます。

僕がオンラインツアーに参加してみようと思ったのは2021年2月のことです。
オンラインツアーというものが流行していると知り気になって調べてみると、様々なプロバイダーがあり、例えばHISサイトでは1000件以上のオンラインツアーが開催されているとを知り驚きました。
まずは試しに参加してみよう。最初なのだから、どこでもいいから安そうなところは…」と、その時は特定の旅行先を探したわけではなかったのです。

そんな僕が迷わず最初に選んだのは「クック諸島」の旅でした。
どこにあるのかも知らない、どんな場所なのかイメージすら無い、そんな「クック諸島」を迷わず最初に選んだ理由は「無料」で参加できたからなのでした。

これから地域のアピールにオンラインツアーを利用できないかと思ってる人にとっては、ここは重要なところですよ(笑)。
全く知らず興味がなくても「無料」は選ぶ理由になります。
アクセスできなかったとしても、内容がつまらなかったとしても、無料ならリスクが低い。
そうして僕は「クック諸島」の無料の旅で、オンラインツアーにデビューすることになりました。

クック諸島」のオンラインツアーに参加してみたところ、僕はその島の魅力にどんどん惹き込まれていきました。
場所がどこなのかを知り、日本からの行き方を知り、島のサイズ感を知り、世界で最も美しいラグーンがあることを知り、日本人がほとんど訪れないことを知り、夜空が絶景であることを知り、現地の人々の優しい気質や食事や踊りなどの文化を知り、ガイドさんのクック諸島にかける愛情が伝わってきました。
ツアーは45分程度だったのですが、僕はすっかり「クック諸島」に魅せられてしまい、最も行きたい海外の旅行先の1つと思っています。そして「無料」のオンラインツアーが終了した直後に「クック諸島」を紹介する他の有料オンラインツアーにも申し込んだのです。
おかげさまで、行ったことも無いのに、周囲の人に紹介しておススメするほどに詳しくなってしまいました。
つまり、僕は「クック諸島の関係人口になってしまった」と言えるでしょう!

最初に経験した「クック諸島」のオンラインツアーがあまりにも楽しい体験だったため、他の地域のツアーにもどんどん申し込みしていきました。
初めの頃は海外の観光地のオンラインツアーばかりでしたが、やがて国内のオンラインツアーにも申し込むようになり、そして「東京駅」を紹介するオンラインツアーに申し込みをしたのです。

鉄道が好きではなくても、東京に住んでいなくても、避けては通れない「東京駅」です。
東京駅の歴史のことや裏技などを知ることができたら面白いと思って「東京駅」のオンラインツアーに申し込みをしました。

ZOOMの画面の向こうに現れたガイドさんと「はじめまして、よろしくお願いします」と挨拶をしたのが、斉藤さんとの最初の出会いでした。

鉄道ファンではない僕のレベルに合わせてくれて、JR東日本とJR東海の違いの話などをとても興味深く教えてくれました。
この「東京駅」のツアーに参加するまでに僕は20件ほどのオンラインツアーを経験しており、オンラインツアーの「中級者」となっていたわけですが、斉藤さんのオンラインツアーにはそれまでに参加したものとは違う点がありました。

共有画面に参加者が書き込みをしながら会話をしたり、ツアーの途中で一緒に体を動かしたりと、「体験型・参加型のオンラインツアー」を展開されていたのです。
「こんなオンラインツアーは体験したことがない!」という小さな感動があり、「このガイドさんの他のツアーも面白いに違いない」と思ったので、「五能線」のツアーにも追加で申し込みをしました。

五能線」のオンラインツアーに参加する前の僕の中の知識は、「行ったことはないけれど、なんとなく秋田の北のあたりかな」という曖昧な地理と、「日本海の景色ばかり続くイメージ」という粗末なものでした。
斉藤さんはこのエリアの見どころをどのように紹介してくれるのだろう?、面白そうだったら今後のツーリングコースに取り入れてみようかな、というのが申し込んだ時の僕の目的でした。

さて、実際に「五能線」のオンラインツアーが始まると、さっそく書き込みタイムが始まります。
この最初の書き込みタイムの様子をみて、斉藤さんは現在の僕の知識のレベルを理解して、理解度に応じたツアーを展開していきます。

五能線」の場所を知り、人気のローカル線であることを知り、車内のアトラクションを知り、地域の歴史や産業を知り、自然遺産と気候を知り、チケットのお得な買い方や予約する際のコツまでどんどん教えてくれました。

特に、①「リゾートしらかみ」なら乗ってみたい、②能代にある「旧料亭金勇」の秋田杉の天井板を実際に見てみたい、③斉藤さんが推している東能代駅周辺を散策してみたい、という3点が印象に残りました。

あっという間にツアーが終わり、その終わった続きでえきねっとから「リゾートしらかみ」の指定席券を予約したのです。
電車旅が好きではない僕が、昨年は1度も電車に乗らなくて済んだと思っていた自分が、切符を予約したのです!
オンラインツアーに影響を受けて自分の行動が変わった、と思える体験でした。

その3週間後、僕は「五能線」のリアル旅に出発することになります。
オンラインツアーで知った場所にリアルで行ってみる、という初めての体験です。

リアル旅で行くのなら、オンラインツアーに参加する必要は無かったのでは?
オンラインツアーを体験してから行くと、何かプラスのことはあるのか?

その答えは明らかでした。
まず、出発する前の時点で、既に恩恵を受けていました。
僕は、斉藤さんに教えてもらった通りにお得なチケットを使い、アトラクションが目の前で見られる良い指定席を予約しました。
知っていなければやらなかったことです。

リゾートしらかみ

電車に乗る前に駅舎やホームで見ておくポイント、車内での過ごし方、途中停車の時間の目安、能代駅と東能代駅に着いたらまずやるべきことなど、全てはオンラインツアーで学んだ通りにうまく行きましたし、オンラインで知っていなければ満喫できなかったことばかりでした。
旅行ガイドを一冊も読まず、スマホのナビなども使わず、初めて訪れる町なのに道を知っていて、道を知っているのに初めてでワクワクしている!実に笑える不思議な体験となりました。

能代駅で下車して、お目当てだった「旧料亭金勇」に向かいました。
秋田杉の一枚板を使った広間の天井があることをオンラインツアーで学んでいたのですが、画面越しの天井と実際にその場で見る天井とでは、やはりスケールが違いました。能代は良質な秋田杉を産出して「木都」と呼ばれ繁栄した歴史があったという情景を感じ取ることができました。
また、無料公開されている施設であるにも関わらず、受付の女性が玄関まで出てきてお見送りしてくださったりと、そこが「料亭」であったというおもてなしの雰囲気まで感じることができました。

旧料亭金勇

そして能代から再び五能線に乗り、東能代駅に向かいました。
まず、到着した東能代駅の様子なのですが、「観光地ではありませんから」と聞いてはいましたが、想像以上に観光地ではありませんでした(笑)。
コインロッカーが無いし、駅の売店は電車が来る時間だけオープンする方式ですし、周辺にコンビニなどはありません。
よく改札を出たところにあるような周辺地図も見つけられませんでした。

オンラインツアーを体験した人が、東能代駅へ観光に来るらしい!
という情報を聞き知って、能代市観光振興課の方と地元地方紙の記者さんが駅で僕を待ち受けていました。
観光地ではない東能代駅に来た経緯を取材・聞き取りをしたいというのです。

挨拶もそこそこに、「それでは行ってみましょう」と僕は駅舎を背に歩き出しました。
地元の2人は「そっちなんですか?ついていきます!」と僕の後からついてきます。
地図も見ずに普通に歩き始めちゃう感じなんですね!?」と記者さんが驚きました。
はい!こっちなんです。ほら、もう見えてきました、あれが転車台ですよ。」と僕が答えます。

転車台

まるで観光客と地元の人の立場が裏返ったようなへんてこな会話が出来上がっていて、3人でしばらく笑いあいながら散策しました。

転車台の次に歩いて向かった先は、かつて木材工場へ木材を運搬するために使われていた線路と鉄橋です。
もう何十年も前から使われていない鉄橋は錆びて朽ちて枕木がところどころ抜け落ちていました。
木都」である能代の繁栄を支えてきた1つの橋が、そこにひっそりと在って、まわりの自然に吸収されながら滅びの美しさを見せている。
まさにこの町の産業遺構だなぁ、と思いました。

木材工場へ木材を運搬するために使われていた線路と鉄橋

碓氷峠第三橋梁やタウシュベツ橋のように有名ではないけれど、この土地の産業の歴史を物語る証人という意味では同じ。
ストーリーがちゃんとあるから面白いのだ、と感じました。

以上がオンラインツアーからリアルツアーに行ってみたという話です。
オンラインツアーを体験してから現地に行ったのは大正解。リアルツアーはとても充実したものになりました。

オンラインツアーに参加した人は実際にはむしろ来ないんじゃないか?
それはどんな媒体でも同じことですよね。ガイドブックでも、誰かの旅行ブログでも同じこと。でも、オンラインツアーの方が臨場感があるし集中できるし、ガイドさんの地元愛は画面越しにもちゃんと伝わってきます。
そしてリアルツアーで現地に行けば、まず何よりも「実物の感動」が必ずありますし、知らない町なのに既に知っているという面白さがありました。

ワーケーションに利用して欲しいので、どうぞ1度現地に見学に来てください。
なんてことに予算を使って、参加者の移動時間を消費して、あげく雨の現地を案内するよりは、ぱっとオンラインツアーでベストコンディションを説明する方がユーザーの満足度は高いかもしれません。

観光客誘致は万人受けを狙ったキャンペーンになりがちですが、オンラインツアーならば鉄道ファンに特化したり、食や温泉に特化したり、歴史に特化したり、もしかしたらバイクで走ることに特化したオンラインツアーだって展開できるかもしれません。

ノウハウの無い自治体に代わって、全国の自治体からオンラインツアー作成を請け負う会社が出現してビジネスになっていくかもしれません。
人気ガイドが出現したり、おすすめオンラインツアーを紹介するソムリエが出現してくるかもしれません。またオンラインツアーのガイドとしてのスキルを担保するような民間資格ができるかもしれません。

世界がどんどんバーチャルになって行く時代ですが、コンテンツはまだまだ隙間だらけなのです。
バーチャルとリアルをつなぐオンラインツアーは、今後の発展から目が離せません。

撮影風景1

撮影風景2

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