決算書があるのに決算のニュースで話題にならない有報の謎

昨年の4月から始めた「有報つまみ食い」。主に上場会社が投資家に対して広く公開している有価証券報告書(有報)をもとに、いろんな会社のいろんな側面を覗いて、間もなく1年が経とうとしています。
この期に及んでこのような話をするのも如何なものかという気はしますが、改めて有報そのものに関するコラムを書きたいと思います。

日本の多くの会社は、学校やお役所と同じように、毎年4月1日に始まって3月31日に終わる1年を一区切りとして、有報の内容やいわゆる決算書もその区切り(会計の世界では、特に“会計期間”といいます)に合わせ、3月31日を決算日とする1年間の儲けなどを計算・公開しています。
したがって、間もなく3月が終わると、3月決算の会社は決算書や有報の作成作業に入ることとなります。

すると、4月末ごろ5月にかけて、経済ニュースなどでは「○○社、増収増益」や「△△社、当期大幅損失と」といった有名企業の決算情報が流れてきます。
しかし、これらのニュースは決算書が載っている有報の内容に基づいたものではありません。
そもそも、3月決算の会社の有報は4月や5月には公開されないのが通常です。

では、何に基づいてこのようなニュースが流れているのかというと、東京証券取引所などの証券取引所がルールとして作成を要求している「決算短信」に基づいていることが通常です。
決算短信の作成は、監査法人(公認会計士)による監査も必要で公開までに時間を要する有報では投資家の「早く決算の結果を知りたい」というニーズに応えられないからという背景があるようです。

では、「有報」と「決算短信」にどんな違いがあるのか、日本を代表する企業、トヨタ自動車株式会社(以下、「トヨタ」)の決算短信と有報を比べて見ましょう。
当然ながら、トヨタも決算短信の方を早く出しています。決算短信が5月8日であるのに対して、有報は6月24日。その差は47日ですから、1ヵ月半ほども差があります。

ただし、決算短信は「速報性」に重点が置かれているため、情報量は少な目です。いわゆる「決算書」と呼ばれる「財務諸表」の重要なものはどちらも含まれていますが、公開されているPDFを比較すると、決算短信が36ページであるのに対し、有報は176ページ。単純計算で5倍近い情報量の差があります。

でも、話題に上がるのはどうしても早い情報である決算短信の方…。でも、情報量は有報の方が多い訳だから、きっと面白い情報も沢山あるはず。ということで始めたのがこのコラムです。

しかし、有報の情報量は膨大で、各社の有報を読み込むのは非常に大変です。
そんなことも踏まえたこのコラムの裏側や追加情報を、3月24日に実施される学びing株式会社様のセミナーの間に時間を頂戴してお話いたします。参加は無料なので、興味がありましたら、ぜひご参加下さい。(ネットスクール株式会社 藤本拓也)

トヨタ自動車株式会社

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